南予の人

地元の酒屋を継ぎ、ブランディングで地方の可能性を拓く。

高山雄大さん、高山未来さん 愛媛県宇和島市 /
KOUJIYA

高山雄大さん、高山未来さん

プロフィール

高山 雄大(たかやま ゆうだい)

1982年宇和島市三間町生まれ。高校を卒業後、東京へ。音楽と芸能活動を約15年続けたのち、2015年に故郷に戻り、実家の酒屋の3代目に。

高山 未来(たかやま みお)

1984年東京都生まれ。服飾の専門学校を卒業後、アパレルの世界へ。有名洋服ブランドのデザイナーとして活躍中、雄大さんと結婚。夫の故郷に移住。

宇和島市の山間部にある商店街で、3代続く酒屋をリノベーションして県内外から人を集める「KOUJIYA」。東京からUターンした3代目の高山雄大さんと、東京からIターンした妻の未来さんが営む。田園が広がるまちに、新しい風を起こしている。

子どもができたことで、東京から夫の故郷へ。

東京から三間町に移住したきっかけは?

雄大さん

妻と結婚する前から、ずっと「故郷に帰りたい」と言っていました。望んで離れたのですが、家業のこともあったし、ぼくにとってずっと大切な場所でした。でも妻は「東京がいい、行かない」の一点張りで、平行線でしたね。

未来さん

生まれ育ったまちだし、必要なものはすべてある。東京の生活に何も不満はなかったんですよ。でも、妊娠・出産を機に考えが変わりました。人混みに出かけたり、子連れで迷惑をかけないように気をつけたりするうちに、住みにくいと思うようになったんです。そんなとき、夫の実家に帰省して、食べ物も空気もおいしくて、のんびりした時間の流れや人との付き合い方も「いいな」と改めて気づきました。地域の人たちは、“子どもは宝”と思ってくれていて、みんなが子どもを見てくれる。ここで子育てをしようと決めました。
高山雄大さん、高山未来さん
東京では何をされていたのですか?

雄大さん

同郷の仲間と音楽活動をしながら、銀座の飲食店で接客をやっていました。夢に敗れたというのもUターンした理由なのかもしれませんね。でも、今は酒屋という“ステージ”で、自分を好きに表現できています。しかも、それが周りに認められるってとても幸せなこと。挫折したからこそ、なおさらそう感じます。

未来さん

洋服が好きで、専門学校を卒業してからアパレルの世界へ入りました。服飾のデザイナーになり、どんどん高いレベルを求められるようになりました。やりがいはありましたが、とにかく激務で残業や海外出張もある。出産したらこの世界には戻れない、と思っていました。今では、これまでの経験を生かし、ロゴやチラシのデザインもしています。東京時代は“一方通行”のものづくりでしたが、今は、人とのつながりの中でものづくりをしていて、反応もすぐに受け取ることができる。制作は大変ですが、やりがいにつながっていますね。
KOUJIYAさんは酒屋のイメージを覆しますね。

未来さん

築120年のお店を改装する予定はなかったんですよ。私がワイン好きで、S N Sで発信していたら、若い人たちが他県からも来るようになったんです。義理のお父さんが若い人が来ても恥ずかしくないように改装したらって提案してくれて、思い切ってリノベーションしました。

雄大さん

ただ、改装をしても昔からのお客さんの思いやこれまでの光景は大事にしたかった。小さい頃、常連さんが朝から囲炉裏を囲むのが日常でした。今も、その“日課”は変わらず続いています。ずっと残していきたいですね。
高山雄大さん、高山未来さん

「田舎だからこそ楽しい」を、もっと。

お二人が立ち上げたお米のブランド「MIMARICE(ミマライス)」も話題になりましたね。

雄大さん

三間町でしかできない“いいもの”を発信したいという思いがありました。ここの特産品はお米です。でも東京では知られていない。だったらブランディングしてはどうかと妻にデザインをお願いしたんです。

未来さん

はじめて三間のお米を食べたとき、こんなにお米の味って違うの?っておいしさに驚きました。私にできることがあればやりたいと思ったし、高齢化する農家さんの現状も知って、産地を盛り上げるために自分たちが発信者になってやってみようと二人でつくったのがMIMARICE(ミマライス)です。
こちらで住んで、ご自身に変化はありましたか?

未来さん

東京にいた頃、愛媛に帰りたいと言っていたのは夫だけではありませんでした。愛媛出身のみんな、口をそろえて言うんですよ。実際に暮らしてみて、なぜ帰りたいのかがわかりました。自然が日常にある豊かさのなかで、子どもたちものびのび育っていますし、自分の心も豊かになった気がします。

雄大さん

「きずな博」というイベント名の通り、ここはきずなが深いんです。それは時に人の死といった悲しみも伴うのですが、人とのつながり、きずなが深いからこそ抱く感情です。深いきずなのある暮らしに身を置いて、愛情豊かな、より人間らしくなったんじゃないかと感じています。
これからの展望を聞かせてください。

未来さん

お酒から派生する商品やストーリーを提案していきたいですね。この前は、角打ちで婚活パーティをして見事に結ばれたんですよ!自分たちが楽しいこと、やりたいことを自由にやっていきたいです。田舎には何もない、じゃなくてないならつくればいい。その楽しさをもっともっと味わっていきたいです。

雄大さん

お店のSNS発信に神経と力を注いでいます。ここは人通りも少ない“田舎”ですが、SNS上でファンを作れば、オンライン販売の売り上げにつながるし、わざわざ遠方から買いに来てくれる。シャッター通りであっても、フォロワー数が多いお店が数店あれば、風景の捉え方や見え方が違ってくると思うんです。“田舎”だからこそ、おもしろいことをやればその道のトップになれる可能性も高い。このまちの可能性を拓いていきたいですね。